ＳＵＰＥＲ ＳＴＡＲ

バイオリンの申し子

──今まで演奏してきた中で、一番印象に残ったことは何ですか？

｢一概には言えませんね。
僕にとって全ての演奏が印象的で、魅力溢れるものですし｣

そう言えることが素晴らしい。
私にはとてもじゃないが、そんなことを言える素晴らしい一時はない。

──いつも、どんな気持ちで演奏しますか？

｢分かりません｣

──分からない？

｢自分が自分じゃないような……いるのなら、音楽の神様に憑かれたような、どういう風に弾けば素晴らしい音が出るのかが分かるんです。
練習では出せなかった音が出るなんて多々ありますよ｣

スターと言うものは本番に強い。
練習以上に力を発揮するのがプロだと、前にインタビューしたプロ野球選手が言っていたのを覚えている。
プロとはまた便利な言葉だ。
ライターにとって、これほど都合が良い言葉はない。