バイオリンの申し子

9/15
前へ
/23ページ
次へ
──あなたの尊敬する人は誰ですか? 「尊敬する人はいません。 自分が一番です。 でもそうですね……強いて言うなら、僕と同年代で活躍する三宅さんですかね」 ──何故同じバイオリンを扱う彼女を? 「彼女の弾くバイオリンは非常に情熱的なんです。 バイオリンとは厳かな風格が漂う楽器なのに、聞くものを陽気にさせるあの技術は目を見張るものがありますね」 ──彼女と共演したいですか? 「まぁ、いつかは。 でもまぁ、彼女から共演の誘いが来てるんですけどね。 僕も十分に場数を踏んだら、彼女と舞台に立ちますよ」 バイオリンの申し子は、まだ場数が足りないという。 ウィーンの名誉あるコンサートに参加するほどの実力だというのにだ。 天才はまだ何を求めるのだろうか。 聞いてみるとする。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加