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真っ暗になり、井上は我に帰った。
落ちているチャッカマンを拾い上げ、石田を見た。
石田はぐったりとしている。そして女性を見ると相変わらず冷たい視線を送り続ける。
「ご、ごめん。また明日、話しに来るわ。」
「なんの話だ?」
「それは明日になってからのお楽しみさ。」
井上は石田を抱えながらポケットにチャッカマンの1つを押し込み、もう1つを持ち、歩き出した。
「貸せよ。」
女性がぶっきらぼうに手を出した。
「すまないな。」
井上は女性にチャッカマンを渡し、女性についていった。
大通りに出て、お礼を言おうと振り替えると、誰もいない暗い道があった。
ポケットには2つ、チャッカマンが押し込んであった。
井上の腕に動きを感じた。
ふと見ると石田がゆっくりと目を覚ましていた。
「あかる!」
目を開けるやいなや叫んだ。
そして、その時、井上に抱かれていることに気づき、焦った。
石田がふいにじたばたした。その拍子に石田の体が井上から離れた。
「痛!」
「だ、大丈夫か?」
「いたたたた~。」
「ごめん。怪我はないか?」
「あ、焦ったやろ!」
「こっちの方が焦ったわ!見たらぐったりしてるから、病院に連れて行こう思ったら、なんやねん。急に元気になりやがって!あそこに置いてかれるよりマシやったやろ!」
「まあ。すまん。悪かった。ありがとうな。」
「分かってくれたらええねん。」
2人はスタスタと別れていった。
その日の深夜、井上はぐっすりと寝ていた。
「…もしもし、石田です。アンナらしき人を見つけました。…はい。分かりました。…分かってます。私にお任せください。ちゃんと仕留めて見せますよ。ボス。」
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