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朝日が井上の部屋を隅々まで照らす。
いつもならイキリながらカーテンを開けるが、今日は開けることすら忘れて弁当を2つ、買っていくと走ってあの路地に向かった。
「Good morning!」
女性を見つけるやいなや叫んだ。
「誰だ。」
相変わらず冷たい視線を送り続ける。
「朝御飯、持って来たから、一緒に食べよう。」
「質問に答えろ。」
視線の冷たさは更に厳しさを増した。
「あ、すまんすまん。井上裕介。昨日白い奴とチャッカマン持って来た…。」
「話ってなんだ。」
冷たい視線が少し穏やかになった。
「うん、気になってんけど、君、嵐の時からここおんの?」
「嵐の時って言うか、もう少し前から居る。」
「そうなん!こんなところで生活成り立ってるん?」
「一応。」
「すっげー!こんなところで0円生活が行われているとは。黄金伝説出れるんとちゃう?」
「おう、ごん?」
テレビ無いから分からんか。
「なんでもない。」
井上は勝手に弁当をどんどん食べている。
「なぁ、名前は?」
「見ず知らずの人に教えられない。」
「そうか。当たり前か。」
相変わらずむしゃくしゃ食べる井上を女性は隅から隅まで見ていた。
「のみもん、どないするん?」
「ああ、どないしよ。ちょっと待っといてな。持ってくるわ。」
井上はさっそうと走っていった。
その様子を少し悲しげに見ていた女性を置いて。
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