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「可能不可能の問題ではない。どんな手段を使ってでも勝たなければ、闇の下では常識が崩壊してクォートは潰える。闇は止まれないのだから、勝つだけでは何にもならんしな。
俺自身が世界の為にとする義理はないが、リンの為とあらばやる。俺が生きる理由だ」
言い切った。
あまりにもハッキリと言ってのけるグリスに、皇帝は感心して脱力した。
「君は……君達は、二人で立派な聖人だ。」
「はっ、この俺が、聖人などと呼ばれるに値すると思うのか?」
「値するよ。ただ一人の為だけに命をかけることが出来るじゃないか。」
グリスはゆっくりと首を横に振った。違う、そんなんじゃない、俺はそんな人間ではない、と。
「そんな綺麗な理由ではない。決して拭うことも、何か他とすげ替えることも出来ない罪から逃げる為だけにやってるにすぎないさ」
「逃げの先に目的を見出だすことが出来ているだけでも、私は十分に凄いと思うさ。」
「…………都合よく解釈するな、全く。」
「こうでもなければ、打開策に辿り着けないからね。皇帝なんて務まらないよ。職業病とでも言うのかな。」
グリスはスッと立ち上がった。
「さて、そろそろ……」
「行くのかい」
皇帝も何となく立ち上がった。
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