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無機質な声の持ち主、若い青年…というより少年が目の前の座りこんだ体躯の良い大柄な男に向けて右手を上げる。
指先には掌くらいの一つの小さな魔法陣がグレーの淡い光を放っていた。
「や、やめろ……悪かった!見逃してくれ!!」
魔法陣を見た男はその場から…その魔法陣から逃げ出したいのか、体をのけ反らせて必死に距離を置こうとしている。
足が言うことを聞かずむだ足ではあるが。
「ごちゃごちゃうるさい。お前の価値は……俺が決める」
「や、やめ―――」
魔法陣がその手から離れた時、男のシルエットは消えていた。
少年も、颯爽とその場から立ち去った。
「俺以外に、選択権はねーんだよ………最初からな」
誰もいなくなった空の下、無機質な声だけが空に吸い込まれた。
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