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ただひとつの実験の為に、リンを使い、民を不安に陥れ、挙げ句の果てに崩壊を招いたのか――。
皇帝は酷く冷静だった。
「そうか……来なさい、我が戦友<とも>よ」
「ここに……」
「……お久しゅう」
皇帝の背後に、月鏡と水鏡が現れた。
「久しぶりだね、月と水の鏡達」
鏡達は、穏やかでないリンの姿を認めると、皇帝の前に進み出て守れる位置に立つ。
「姫のことは」
「既に知るゆえ……」
流し目でカーリナを見る二人の目は、いつもリンに向けていたものではなかった。鋭く、凍てつくように冷たい。
「さて、月の神、水妖の神。合わせ鏡は何を作る?」
皇帝が問い掛ける。
月鏡――月の神が水鏡の方に体を向ける。
「封じられた魔を解く扉のみ。」
「では、その魔を解き放つとしよう」
水鏡――水妖の神が月鏡の方に体を向ける。
「わらわ等もまた閉じられた世界へと帰るとしよう……。」
象徴として鏡となる二つの者が向かい合い、合わせ鏡が次元の異なる世界を繋ぎ――封じられた扉が開いた。
皇帝が手を伸ばせば、合わせ鏡が光に包まれて皇帝のもとに収束する。収束したのち、光がパアンと弾け散った。
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