第14章 鳴り響く祝福と崩壊

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ただひとつの実験の為に、リンを使い、民を不安に陥れ、挙げ句の果てに崩壊を招いたのか――。 皇帝は酷く冷静だった。 「そうか……来なさい、我が戦友<とも>よ」 「ここに……」 「……お久しゅう」 皇帝の背後に、月鏡と水鏡が現れた。 「久しぶりだね、月と水の鏡達」 鏡達は、穏やかでないリンの姿を認めると、皇帝の前に進み出て守れる位置に立つ。 「姫のことは」 「既に知るゆえ……」 流し目でカーリナを見る二人の目は、いつもリンに向けていたものではなかった。鋭く、凍てつくように冷たい。 「さて、月の神、水妖の神。合わせ鏡は何を作る?」 皇帝が問い掛ける。 月鏡――月の神が水鏡の方に体を向ける。 「封じられた魔を解く扉のみ。」 「では、その魔を解き放つとしよう」 水鏡――水妖の神が月鏡の方に体を向ける。 「わらわ等もまた閉じられた世界へと帰るとしよう……。」 象徴として鏡となる二つの者が向かい合い、合わせ鏡が次元の異なる世界を繋ぎ――封じられた扉が開いた。 皇帝が手を伸ばせば、合わせ鏡が光に包まれて皇帝のもとに収束する。収束したのち、光がパアンと弾け散った。
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