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「…聞いたことがあります。『葉二』は博雅三位以外に吹く事は叶わなかったが、『紅葉』は誰にでも吹け、『葉二』に近い音色を出す事が可能だった、と…しかし父上。何故そのような話を…?」
宗綱には理解出来なかった。
楽聖、博雅三位の話は確かに聞いたことがある。
だが、その話が父が自分に頼みたい事とどんな関係があると言うのか。
「…うむ…実はな、宗綱よ。俺はその『紅葉』を一度手にした事があるのだ。」
「…なんと…?」
「まだ俺が15か16の時にな。ある戦場で出会った、妖しい巫女が持っていた。それは美しい音色でな…俺は本物だろうが偽物だろうが構わなかったから、その笛が欲しかった。だが、それは叶わなかった。」
「それは、何故に…?」
「時期ではないと言われたのだ、その巫女に。力づくで奪ってもよかったが…そのような愚かな行為は嫌いだったからな…。」
父の言う事に、宗綱はすぐに納得した。
父がそのような下賎な行為をするなど、考えられない事だからだ。
「某は、義に厚い父を尊敬致しまする。」
「…そうか。」
政宗はそれに僅かに笑顔を浮かべた。
「してな。その巫女は俺が新たな都を開いた時こそ、笛を手にするに相応しいとのたまったのだ。」
「…新たな都…?」
「そうだ。すなわち…ここだ。」
「仙台…。」
「本来ならば、俺自身が探すべきなのだが、いかんせん歳だ。そろそろ忠宗に位を譲ろうかとすら考えておるのだ。」
「父上…」
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