木の葉は深紅に染まり

7/7
前へ
/11ページ
次へ
🍁 🍁 🍁 🍁 🍁 「…聞いたことがあります。『葉二』は博雅三位以外に吹く事は叶わなかったが、『紅葉』は誰にでも吹け、『葉二』に近い音色を出す事が可能だった、と…しかし父上。何故そのような話を…?」 宗綱には理解出来なかった。 楽聖、博雅三位の話は確かに聞いたことがある。 だが、その話が父が自分に頼みたい事とどんな関係があると言うのか。 「…うむ…実はな、宗綱よ。俺はその『紅葉』を一度手にした事があるのだ。」 「…なんと…?」 「まだ俺が15か16の時にな。ある戦場で出会った、妖しい巫女が持っていた。それは美しい音色でな…俺は本物だろうが偽物だろうが構わなかったから、その笛が欲しかった。だが、それは叶わなかった。」 「それは、何故に…?」 「時期ではないと言われたのだ、その巫女に。力づくで奪ってもよかったが…そのような愚かな行為は嫌いだったからな…。」 父の言う事に、宗綱はすぐに納得した。 父がそのような下賎な行為をするなど、考えられない事だからだ。 「某は、義に厚い父を尊敬致しまする。」 「…そうか。」 政宗はそれに僅かに笑顔を浮かべた。 「してな。その巫女は俺が新たな都を開いた時こそ、笛を手にするに相応しいとのたまったのだ。」 「…新たな都…?」 「そうだ。すなわち…ここだ。」 「仙台…。」 「本来ならば、俺自身が探すべきなのだが、いかんせん歳だ。そろそろ忠宗に位を譲ろうかとすら考えておるのだ。」 「父上…」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加