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時は江戸時代初頭。
天下分け目の合戦から、早5年。
太閤豊臣秀吉の威光は最早、かつてのものとなり、今や将軍徳川家康が天下となった。
江戸に開府した幕府もどんどん力をつけていき、諸大名の力は少しずつ削ぎ落とされていた時代。
舞台は、陸奥(みちのく)。
陸奥のほとんどを治めていたのは、仙台藩仙台城を持つ、奥州筆頭、伊達政宗である。
城下街の開拓も進み、郊外の何箇所かを残しほとんど完成されつつあった。
仙台藩は江戸に負けないほどの活気と、勢いを持っていた。
政宗が豪華絢爛を好んだ為、美しい寺社が点在するなど、上方にも負けない文化を持っていた。
そんな派手で賑やかな城下から遠く離れた山の中。
「…暑いな…。」
伊達政宗が第五子、伊達宗綱は片倉小十郎景綱の息子、重長(しげなが)を連れ、残暑の山を歩いていた。
「全くですな、若。先の商人の話では今しばらくすれば、涌き水があるとか。そこで一休み致しましょう。」
「そうだな…。もう一頑張りとするか。」
宗綱は額の汗を拭い、重長を連れ歩き出した。
「しかし異なことだ。父上の命とは言え、見たこともない笛を捜せ、とは…。俺はてっきり徳川か北条へ行け、と言われるものと思ったのだがな…。」
「は。」
宗綱が政宗から命を受け、旅立ったのは昨日。
今は岩出山(いわでやま)を目指し山越えの最中である。
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