【二人の人食いと一人の吸血鬼】

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 俺は人を食う。  他のものは食べない。  ある日を境に人の肉しか食べれなくなったのだ。  他のものは何を食べようとしても吐い出してしまうようになり、一度、人を味わった今では、普通に食べれていた筈の食べ物は喉を通らない。  初めて食べた人肉は自分の母親だった。  母親は重い病気を患っていで家で寝たっきり、まともに動けない母親を食べやすく解体するのはとても簡単な作業だった。  不健康で痩せ細ったその身体は殆ど肉は付いて無く、簡単に包丁で皮膚を裂くとだくだくと血が流れ出した。  それを掬い口に含むと、とても美味しかった。  本当に美味しかった。  そして、どんどん解体していき、口に含んでいく。  別に、旨味がある訳でも甘味がある訳でも辛味がある訳でもなかったけど、今まで食べてきたどんなものよりも美味しかった。  貧しくて食べ物なんてたいしたもの食べたことなんて無かったけど、本当に美味しかった。  途中からは無我夢中に母親に縋り付き、素手で貪った。  まるで、飢えた野獣のように。  コリコリする指、固くて噛み応えがある腱、不思議な舌触りのする脳味噌。
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