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「香山……」
室内に四人だけが残され、土方が口を開いた。
「お前、辞めるとか言わねぇだろうな?」
「まさか、そんなこと言いませんよ」
鶴乃はにこりと微笑んだ。
「お二人には自分の実力を見ていただきます」
「しかし、どうやって……?」
「午後の永倉さんの予定はどうなっていますか?」
困惑する近藤をよそに、鶴乃は土方に尋ねる。
「二番隊は午後から非番だ」
少し考えて、土方が答える。
「では、明日の午前中は?」
「あ、明日の午前中は私の隊と道場で稽古になっているはずです」
沖田が挙手する。
そうですか、と言ったきり考え込んだ鶴乃。
「……何考えてやがる、てめぇ」
腕を組み眉間にしわを寄せる土方の言葉に、我に返る。
「いえ、別に。
もう一つお尋ねします。道場に女は入れませんよね?」
「おう。
……ってまさか、永倉とやり合おうとか考えてんじゃねぇだろうな?」
驚いたように鶴乃を見る、近藤と沖田。
「大丈夫です。
やり合うのは“あたし”じゃありませんから」
微笑む鶴乃に近藤は安堵の表情を浮かべ、土方はため息をつく。
「……総司、香山をお紺のところへ連れて行け」
はーい、と間の抜けた返事をして沖田が立ち上がる。
「行きますよ、鶴乃」
鶴乃は近藤と土方に一礼すると、さっさと部屋を出て行く沖田のあとをあわてて追った。
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