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――結局聞き出せなかった。
道場で隊士相手に稽古をつけながら、沖田は考えていた。
「やあああっ!」
隊士が木刀を振り上げ斬りかかってくる。
――いったい何を企んでいるんでしょうか……
そう考えながらも隊士を軽く受け流し、急所へ打ち込む。
「ここががら空きですよ」
打ち込まれた隊士は床へ倒れこんだ。
気は失っていないようだが、戦意は喪失しているようだ。
「沖田先生、もう無理です~……」
「新撰組の隊士たる者が、これくらいの稽古で疲れていてはいけませんよ?まったく……。
次の人、前へ」
男らしからぬ情けない声で情けないことを言う隊士に呆れたようにため息をつき、沖田は辺りを見回した。
しかし、沖田の前には誰も現れない。
「……総司、お前が担当したやつは全員つぶれてるぞ」
呆れたように言う永倉と、冷や汗を掻いている様子の永倉が担当している隊士達。
沖田の担当であろう残りの隊士達は、道場の隅っこに倒れこんでいた。
中には完全に気を失っている様子の隊士もいる。
「あれー……やりすぎちゃいました?」
えへへ、と少年のように笑う沖田。
「じゃあ永倉さん、少し分けてください」
「嫌なこった」
永倉は即答した。
「半分は生き残らせておかねぇと、怪我人運ぶのが大変なんだよ」
なるほど、と納得した様子の沖田に、残っていた隊士達はほっと胸を撫で下ろす。
「……ま、俺もそれなりにはきつーく稽古つけてやるから安心しな」
隊士達の様子を見た永倉は不敵な笑みを浮かべた。
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