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障子に人影が映る。
「山南副長、入ってもよろしいですか?」
凛とした声に、どうぞ、と一言返事をした山南は布団に入っていた上半身を起こした。
「お薬をお持ちしました」
盆を持って入ってきた鶴乃が山南のそばに座る。
「すみませんね、迷惑をかけてしまって。
このところ、どうも調子が悪くて…」
枕元に置いていた眼鏡をかけながら、山南は苦笑いを浮かべる。
「きっと疲れていらっしゃるんですよ」
薬包を渡しながら鶴乃が言った。
「とにかく今は休養が一番です」
「しかし……皆に申し訳ないですよ」
差し出されたそれを受け取ろうとした手を止めて、山南は言った。
「副長とあろうものが、自分の体調管理も出来ず、隊務もこなせないなんて……
皆の足を引っ張っている自分が情けなくてね」
山南は俯いた。
視線の先には、軽く握った手。
彼はさらに力を込めた。
今朝切ったばかりの爪が、掌に食い込む。
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