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突然、鶴乃の手が山南の手を包み込んだ。
「山南副長」
彼が顔を上げると、鶴乃と目があった。
「病は気から、ですよ」
そう言って山南の手に薬包を乗せた。
鶴乃の笑顔が、優しい。
「……鶴乃は優しいですね」
ありがとう、と包みを広げる。
「私が……お父上に似ているからですか?」
「……え?」
白湯を渡そうとしていた鶴乃の手が止まった。
「私がお父上に似ているから……同情しやすいのですか?」
山南の目は、手元の薬を映している。
「そんなこと……!」
「……そんなこと、ありませんよね」
すみません、と鶴乃に苦笑してみせ、薬を口に含んだ。
そして、顔を少ししかめる。
苦かったのであろう。
「……父を、知っているのですか?」
白湯を渡しながら鶴乃が言った。
「会ったことはありませんよ」
薬を飲み込んだ山南が鶴乃に笑いかける。
「聞いたんですよ、私がお父上とそっくりだと」
鶴乃の表情が曇る。
「……山崎さんですか」
山南は返事をせず、少し笑みを浮かべただけだった。
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