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道場には空間が作られ、二人が向き合っていた。
「では、一本勝負で」
いいですね?と審判の役を買って出た沖田が、彦次郎と隊士の双方の顔を見る。
両者が頷き、それぞれの位置で竹刀を構えたのを確認すると、沖田は三歩下がった。
「始めっ」
パァンッ
沖田の声と、隊士の竹刀が弾かれたのは、ほぼ同時だった。
「はい、終わり」
いつの間にやら腰を抜かす隊士の目の前にいた彦次郎は、彼のおでこにコツン、と竹刀をぶつけた。
「沖田先生、自分の勝ちですよね?」
キラキラ、という形容がふさわしいような笑顔を浮かべ、彦次郎が問う。
「素晴らしかったですよ」
沖田も笑顔で答える。
「さ、永倉さん。ご自身で体感なさって下さい」
そう言って、黙っている永倉に竹刀を差し出した。
「……約束だ、しょうがねぇな」
沖田から竹刀を受け取り、永倉はゆっくりと立ち上がった。
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