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両者はぴくりとも動かない。 ――こいつ、隙がない。 永倉はそう思った。 自分より大柄の者を相手とすることの多い普段ならば、迷わず懐に飛び込む。 しかし彦次郎はあまり変わらない背丈の持ち主。 しかも隙がないときた。 ――さあ、どうする? 短い時間が、何刻にも感じられる。 パァンッ 最初に仕掛けたのは彦次郎だった。 素早く反応した永倉は、竹刀で彦次郎のそれを受けとめる。 永倉はそのまま押し返して、胴を狙った。 しかしそれを彦次郎に止められた。 「……さすが永倉先生です」 楽しげに彦次郎が言う。 「でも」 一度、距離を置く。 「負ける気はしません」 「……そんな口、叩けねぇようにしてやるよ」 竹刀を構え直した。 .
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