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「自分は永倉先生に稽古をつけていただいていたんです!
邪魔したのは土方さんの方ですよ!」
「てめぇのせいでうちの隊士が何人稽古出来なくなったと思ってんだ?あぁ?
いい加減にしねぇと兄貴に言い付けるぞ、こら!」
一気にまくし立てたのか、両者とも息が上がっていた。
「あれ、お二人はお知り合いなんですか?」
それまで楽しげに傍観していた沖田が突然、口を割った。
「ん?あぁ……知り合いの弟でな。
この前偶然会ったときに入隊させてくれと頭下げられたがあしらっといたんだよ。
まさかこんなことしやがるとは……」
そう言って土方は彦次郎の襟元をぐいと引っ張る。
「これから俺の部屋でみっちり説教してやろうじゃねぇか」
にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「え……遠慮しておきます!」
「てめぇなんぞに拒否権はねぇよ。
よし、稽古は再開しろ。
総司。くれぐれも、怪我人を増やすんじゃねぇぞ」
じたばたともがく彦次郎を引きずって、土方は道場の戸口に向かった。
「……永倉」
ふと足を止め、振り返らずに名前を呼ぶ。
「稽古終わったら俺のところに来い」
「……はい」
永倉の返事を聞くと、土方は彦次郎を片手に道場を後にした。
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