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「――えろうすんまへんなぁ、お鶴はん。待たせてしもて」
こちらどす、と店主が品を差し出す。
「ありがとうございます。……すみません、お忙しい時に」
お鶴が込み合った問屋の中を見回しながら申し訳なさそうに言うと、店主は人の良さそうな笑顔を浮かべて、首を横に振った。
「――それより」
店主は声を潜める。「最近この辺り、長州の浪人がぎょうさんおるんよ。帰り、気ぃつけてな」
ほな、旦那はんによろしゅう、と言う店主に礼を述べ、お鶴は問屋を後にした。
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