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会社でバッチリ化粧直しをしたあたしは、隆司の前にしおらしく座り、彼が話を切り出すのを待っている。
何度も何度も来ている部屋なのに、今日だけは全然違う部屋に見えた。
それにしても……。
さっきから俯いたまま、一向に話をする気配がない。
やっぱり、プロポーズって緊張するのかしら?
などと考えていると、
「―――美咲……。」
不意に名前を呼ばれ、慌てて可愛い笑顔を作り出す。
なぁに?
と、可愛らしく首を傾げて次の言葉を待った。
「別れてくれないか。」
「へ?」
このときのあたしは、人生で一番間抜けな顔をして、間抜けな声を上げていたに違いない。
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