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八尾が出て行ってから、教室は静かになった。
ほとんどの奴が初対面だからなのだろう。
皆何か話しずらそうだった。
だが、少し時間がたったら、徐々に話し声が聞こえてきた。
「君、大丈夫?」
「あ?」
隣の奴がいきなり話し掛けてきた。
眼鏡をかけていて、気が弱そうな印象がする。
眼鏡の中の目が見えない。どうなってんだ?
「右の頬が凄い腫れてるよ」
「マジで? ちょっと鏡貸してくれよ」
「はい」
手際よく、俺に鏡を渡してきた。
「試合後のボクサーかよ」
右頬はお餅のように膨らんでいた。
クソ! あのゴリラが!
「どうしたんだい? その頬」
不思議そうに俺を見ている。
「いやよー。学校来る途中、他校の奴とケンカしちまってよ」
凄い嘘をついたもんだ。
自分でも笑ってしまいそうだ。
「凄いんだね!」
いや、信じるのかよ!。
純粋な奴だな。
「名前なんて言うんだ?」
「田中真だよ。君は?」
「藤崎ヒカルだ」
「ヒカル君だね。よろしく」
笑顔で手を差し出してきた。
握手がしたいようだな。
-ガシャーン!-
握手をしようとした瞬間、机が飛んできた。
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