第一話 ちょっとした告白

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ミーンミンミーン… 夏。 誰がなんと言おうと夏。 夏というものは俺たちの体力を奪い死へと導く。四季の中で最も極悪非道だ。 俺たちには打つすべはなく、ただただ暑さに耐えるしかないのだ… 「エアコンかかった教室でゲームしながら何言ってんの?ミライ?」 「おっと、声が漏れていたか。ヘッドホンしてるとわからないもんだな。いやぁ、すまんすまん。ただ夏といわれるものが嫌いだと言いたかっただけなのだよ。」 俺こと新堂未来(シンドウミライ)は夏が嫌いなんだ。 「ほう、それはボクに対する嫌がらせなのかな?」 「おっと、それは違いますよ。千夏さん。」 この女は日浦千夏(ヒウラチナツ)。一人称がボクという多少かわったやつ。僕っ娘はゲームとか小説の中ではステータスの一つかもしれないが実際の女では大したものではない。でもこいつは俺の趣味にケチ付けないし、多分ある程度理解してくれてるから良い奴だと思っている。 さらに幼なじみというまさに腐れ縁なのだが…まぁとくに思うことはないな。 「俺は飽く迄四季のうちの夏が嫌いだと言ったのだ。決してナツが嫌いだとは言ってませんので許してください。」 俺はコイツをナツって呼んでる。まぁ千夏って呼んでもいいんだが二文字の方がスッキリするからナツ。昔からそう。 「また、そうやって不意に…」 「どうかしたのか?顔が赤いぞ?」 「なっ、ただ暑いだけだ!!うん、夏は暑いから嫌だよな!!」 「やっとわかったか。こういうときはじっとしてるに限るよな。」 「クーラー効いてるけどね…」 「なんか言ったか?」 「いや、何も!!」 ったく、コイツはいつも一言多い。クーラーかかってても夏自体が嫌いなんだからこうしてないとやってられないのに。 まだまだわかってないな。
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