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今すぐにでも抱きしめてしまいたいような衝動に駆られる。
それでも、金魚を抱きしめることは出来なかった。
今、もしも抱き締めてしまったなら、すべてが壊れてしまいそうな気がして。
少し離れた場所から、聞いたことのない鼻歌を歌いながら食器を洗う金魚を見ていた。
なんだか、泡に紛れて消えてしまいそうな、そんな気もするんだ。
「金魚」
「なに」
振り返ることなく紡がれる返事。
セーラー服の赤いスカーフが、すこしだけ揺れていた。
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