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僕は、金魚の家族を見たことがなかった。
それどころか、金魚がどこに住んでいるのかも分からない。
けれども、『近所』に住んでいるのは確かなようだった。
「……金魚のお母さん?さあ、どうだろう」
こうやって無理に笑いながら、いつも彼女は話をはぐらかした。
思い返してみれば、僕と金魚はいつどこで知り合ったのかを覚えていない。
同じ幼稚園には居なかったけれど、なぜか遊ぶときはいつも同じだった。
小学校も同じじゃなかったし、中学校も同じじゃない。それなのにいつも一緒に帰っていた。
学校の近くの公園に、見たことの無い制服を着ながら、いつも僕を待っていた。
そして今、やっと金魚と同じ高校に入学した。
――と、言っても、僕らは高校2年生だ。入学して少し経っている。
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