しき

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「ちゃんと、食べなきゃダメだよ」 白い病室。 「食欲がないの。それに食べなくても生きていける気がするし」 白い肌。 「人間は食べなきゃ生きていけません」 僕は白が病的に好きだ。 不健康的な白い肌をした彼女も、彼女の住んでいるこの白い病室も。 訪れる度、非日常を垣間見る。 我を忘れてうっとりしてしまいそうになるが、そんな自分は心の奥底に這いずっててもらう。 黒い世界で生きるからこそ、白の尊さを知るのだ。 「そういえば今日、雪が降るって天気予報で言ってた。積もるかしら」 「雪?」 「ええ。雪。今年初めて‥‥って、天気予報見てないの?」 「朝は忙しいから」 通りで冷えていると思った、と呟く。 雪、か。 「積もればいいな。此処だけが白いのはなんだかつまらないもの」 「そうだね」 相槌を打つ。 そのうちに街は白く染まるだろう。雪で覆われ、白に染まる。 白い季節。 なんて素敵な世界だろう。 溶けたときの絶望すら、今の高揚した気分には勝てない。 黒に白。白に黒。 白を感じるためなら躊躇わず黒に身を浸そう。 白を知るために。 お題。 虫喰い http://domenica.2.tool.ms/
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