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車に散々揺られて到着したのは、山奥の建物だった。
金網で囲まれ、兵士が警備に立つ建物。ここが目的地なのだろうか?
僕は車に乗せられたまま、そのゲートを超え、建物の入り口で車が止まる。
「さ、こちらへ」
導かれるまま車を降り、僕は役人の後について建物の中へ入った。
建物は鉄筋コンクリート、造りとしては病院や学校に近いと思う、白で統一され潔癖さを通り越し、不安定感を煽る。入り口を入ると二階まで吹き抜けのエントランス、真ん中には二階に続く巨大な階段、左右にはどこへ続くかも分からない枝道が続く。
右側に受け付けらしきカウンターに、女性の軍人が一人いる。役人はそちらに歩き出し、僕もそれについて行く。
「会場はいつもの?」
役人は女性にそう聞いた。無駄を一切はぶいた言葉だ、彼が毎日のようにこの仕事をしているとよく分かる。
女性兵は頷き、首から下げられるパスケースに入ったカードを出す。それを受け取った役人は、それを僕に差し出す。
「仮のIDです。
これ無しで基地内をうろついた場合、無警告で射殺されても文句は言えません」
冷や汗が背中に落ちた僕は、そのカードを受け取り首からぶら下げた。
「これを持ってれば、安全なのか……」
役人は蛇の目が細め、頬を釣り上げたが、僕はそれが笑顔だとは思えない。
「いえ、無警告で射殺された場合に、文句を言えます。
遺族が、ですがね」
肩を揺らし笑う役人の姿に、僕は怖気を覚えた。
*
役人に導かれ二階へと上がり、廊下を進むと、観音開きの扉が現れ。蛇男と僕はそこで立ち止まる。
「こちらがアナタがこれから何をするのかの説明会場です。
入ったら自由に空いてる席に座って下さい」
僕は頷く。
「それでは私はこれで……」
と言葉を残し、蛇男は立ち去り、僕は扉の前にひとり残された。
扉の左右には銃を構えた兵士が二人づつ見張っていて、入らない訳にもいかない。僕は意を決して、扉を開けた。
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