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そこに広がっていたのは、意外と言ったらおかしいが、普通の会議室のような所だ。そこに学校の全校集会よろしく椅子が並べてある。既に席は半分以上、僕と同じく首にリングを付けた人間で、埋まっている、全体的に前の方が空席が多いのはなんとなく共感する所がある。
そしてそれを数十名の兵士が取り巻き見張っている。
これから受ける説明は、はっきり言って僕のこれからの生死を決める物だろう。僕は前列の席を選んだ。
前列の方が空いているとはいったが、一番前は逆に埋まり気味だ。これは僕と同じ考えなんだろう、積極的な態度で臨まねば死ぬ事になる、いや、少なくとも死ぬ確率は上がる。
僕が座った席は割と密集地帯だ、お互いやる気のある者同士という訳だ。僕が席に近付くと周囲の視線が一瞬僕に集まり、すぐに逸れる。馴れ合いする気は僕も無い、僕は席に着く。
「こんにちは」と隣から声をかけられた。 僕が隣に首を振ると、そこに座って居るのは女性だ。眼鏡をかけ長い黒髪でスレンダー、僕が言うのもなんだが、美人さんである。
「どうも」
僕は素っ気なく言葉を返した。馴れ合いする気は無かったからだ。しかし彼女はあまり気にする様子も無く、僕には眩しく感じる程の笑顔になる。
「あなたも徴兵組? あ、こっちに居るんだからそうよね、ごめんなさいおかしな事聞いて。あ、自己紹介がまだだったわね、私は坂城 由樹(さかき ゆき)。字は……」
彼女は関を切ったように話しはじめた。よっぽど周りが無愛想だったに違いない。彼女の指先の震えが目に入り、僕は話を聞く位なら良いかと、彼女の話を聞いた。
彼女も徴兵されここに来たそうで、僕と同じくあの蛇男が担当だったそうだ。そこに何か引っかかる物を感じたが、なんだかもやもやする一方なので、僕はその考えを頭の隅に放置した。
しかも彼女が徴兵された際、それを止めようとした父親が、射殺されたそうだ。結構凄い体験してますね。
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