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それ以上家族に危害を及ぼさないように彼女は、ここに来たという訳だ。
だから彼女はさらさら死ぬつもりは無く、生きて兵役を終える予定だと言っていた。だが僕はそこで一つ疑問が浮かぶ。
「兵役?」
僕は紙飛行機の中身は読んでいない。
「渡された資料読んで無いの?」
彼女は信じられないといった様子で、背を伸ばした。
「ちょっと色々たて込んで、資料無くしちゃって……」
「そう……」
納得したのか、彼女はポケットから紙を取り出す。まあこれが普通だよな、僕の紙飛行機は今頃ゴミの中だ。
「ほら、ここ」
広げた紙を指差さす先にはこう書かれている。
『兵役期間』
――地球防衛軍に属する兵士は、以下のいずれかの条件が満たされるまでを兵役期間とする。
――1.死亡した場合
――2.防衛軍事行動に支障をきたす怪我を負った場合
――3.2年以上佐官を勤め、除隊申請が受理された場合
つまり死ぬか、足の一本二本無くすか、昇進するかしか除隊する方法は無いという訳だ。
「私はきっと昇進して除隊してみせる」
そう言った彼女の目は、意志の力に満ち溢れて居る。僕は笑顔で頷く。
「頑張って!」
彼女は目を丸くしたかと思ったら、突然吹き出した。
「頑張ってって、あなたも頑張らないと」
確かに死ぬか足を失うのは嫌だなと、僕は肩を震わせ笑う彼女につられて笑ってしまった。
*
しばらく坂城さんと話こんでいると、壇上にあの蛇男が現れた。
「えー、皆さんこんにちは。私は地球防衛軍情報部の真木(まき)です」
真木と名乗る蛇男は、会場中を見渡し、指を立てる。
「皆さん、これから説明する事は良く聞いて下さい。さもなくば、死刑になりますよ」とお決まりの笑顔とは思えない、不気味な笑顔。
「皆さん、これが皆さんの命と地球を守る、スーパーウエポン……アートシュナイダーです」
真木の芝居がかった口調を合図に、その後ろのモニターに映像が映される。
そこに映されているのは、街中に銀色の人型が構える姿だ。車などとの対比から十メートル程かと伺える。
それが道路を蹴り駆け出した。
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