捕獲

7/16
前へ
/27ページ
次へ
 それ以上家族に危害を及ぼさないように彼女は、ここに来たという訳だ。  だから彼女はさらさら死ぬつもりは無く、生きて兵役を終える予定だと言っていた。だが僕はそこで一つ疑問が浮かぶ。   「兵役?」  僕は紙飛行機の中身は読んでいない。 「渡された資料読んで無いの?」  彼女は信じられないといった様子で、背を伸ばした。 「ちょっと色々たて込んで、資料無くしちゃって……」 「そう……」  納得したのか、彼女はポケットから紙を取り出す。まあこれが普通だよな、僕の紙飛行機は今頃ゴミの中だ。 「ほら、ここ」  広げた紙を指差さす先にはこう書かれている。   『兵役期間』 ――地球防衛軍に属する兵士は、以下のいずれかの条件が満たされるまでを兵役期間とする。 ――1.死亡した場合 ――2.防衛軍事行動に支障をきたす怪我を負った場合 ――3.2年以上佐官を勤め、除隊申請が受理された場合    つまり死ぬか、足の一本二本無くすか、昇進するかしか除隊する方法は無いという訳だ。   「私はきっと昇進して除隊してみせる」  そう言った彼女の目は、意志の力に満ち溢れて居る。僕は笑顔で頷く。 「頑張って!」  彼女は目を丸くしたかと思ったら、突然吹き出した。 「頑張ってって、あなたも頑張らないと」  確かに死ぬか足を失うのは嫌だなと、僕は肩を震わせ笑う彼女につられて笑ってしまった。     *      しばらく坂城さんと話こんでいると、壇上にあの蛇男が現れた。 「えー、皆さんこんにちは。私は地球防衛軍情報部の真木(まき)です」  真木と名乗る蛇男は、会場中を見渡し、指を立てる。 「皆さん、これから説明する事は良く聞いて下さい。さもなくば、死刑になりますよ」とお決まりの笑顔とは思えない、不気味な笑顔。   「皆さん、これが皆さんの命と地球を守る、スーパーウエポン……アートシュナイダーです」  真木の芝居がかった口調を合図に、その後ろのモニターに映像が映される。  そこに映されているのは、街中に銀色の人型が構える姿だ。車などとの対比から十メートル程かと伺える。  それが道路を蹴り駆け出した。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加