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朝のまろやかな空気の中私はまどろんでいた。
この時間、限りなく続けばよいのにと思うほどに至福を感じてしまう。
「うーむ、この時間は至高にして我が嗜好に沿う素晴らしき時間だ」
おもいっきり伸びをして仕方なくまどろみを振り払う。
手を上に、背筋を伸ばし、くぅーという声とともに、私の意識は覚醒する。
すぱこーん!!
小気味の良い音と頭に走る衝撃……これは、やれやれまたやってしまったようだ。
「流鏑馬生徒、今は何の時間かね?」
青筋立てた20代半ばくらいの銀縁眼鏡の男性が私を睨みつけていた。
「うむ、本日もすごい形相であるな、桐咲教諭殿。先ほどの問いに答えるならば、今はそう、風紀委員会の時間だ」
さらに青筋を走らせ、もう半ば顔全体に血管が浮いてるんじゃ、というような有り様の顔を私に近づける。
「良い答えだな、合格点をあげよう。しかし、しかしだ流鏑馬生徒。付け加えるならば今! 我々は! 先日の投書に基づき! とある検案について! 話し合っていたところだった!! はずだよなぁ?」
息が生ぬるい、しかし不思議と不快でないのはこの人が常日頃から歯磨きを欠かさぬ証拠であろう。
いや、違うか。
むしろこの場合問題は口臭ではない。
そう言うなれば、この……
「おい、聞いてんのかてめぇ!!」
ついにキレた桐咲さんが私に向って鉄拳を叩き落とす。
「……っつ!!」
すごく痛いぞ。
目で訴えかけてみたが、完全に無視された。
おぉ、これが世にいうスルーというやつか。
いや、微妙に違う気も……
「だー!! 話がすすみゃあしねぇ。流鏑馬、てめぇ次寝たらたたっ切るからな」
冗談みたいだが冗談じゃない。
しかたあるまい、多少まどろみ足りぬところはあるが話を聞くとしよう。
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