理想は理想のままで

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「しっかり頼むよ。全く」 田中課長は気のない俺の返事を聞いて、わざと聞こえるように言いながら自分のデスクへ戻っていった。 どうしたものかな、この無気力を解消するには。 ワードの画面が開かれたままのパソコンを見た。 意気込んで、手をキーボードの位置にセットはするが、一向に文字がでてこない。 パソコンの画面には虚しくカーソルだけが点滅を繰り返している。 それを見るのが嫌になって、一面ガラス張りの窓から外の景色を見る。 目を凝らすと僅かに雪がちらついている。 雨よりもゆっくりと雪は地面に向かって落ちていく。 そういえば、沙耶(サヤ)と最期に話したとき、雨が降っていたっけ。 あれから三週間か... もう雪の季節なんだな。
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