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それは、余りにも衝撃的な──光景だった。
思わず茫然自失。そして、こんな光景を目の当たりにした僕は悲憤慷慨せずにはいられなかった。
なんだよ、これ。
一体なんだよ。
教えろよ、獅子宮すばる。
「退きなさい。邪魔よ」
彼女の向こう側で。
半透明で赤い目を持つ、人型の巨大な何かがいた。
それは大喝一声し、ビルや鉄橋を力任せに破壊している。圧倒的な光景。
こんなの、映画でしか見たことねえよ……。
なあ、獅子宮すばる。
コイツ、何なんだよ。
「……」
答えない。つか、コイツ、何する気だ?
「ちょ、ちょっと待──」
飛躍した。まるで魔術師のように、身体に風を纏い、彼女は飛び上がったのだ。
僕は校舎の屋上でただ見ている事しかできない。
状況は理解不能で、彼女は正体不明で、何が何なのか、意味不明。
この、不自然に漆黒い(くろい)世界は一体何だって言うんだ?
巨大な何か。
そいつは、街を破壊し轟音を鳴らしていた。目の前でビルが崩れる時に聞こえてきそうな、──轟音。
洒落にならない。
現実逃避に走ろうとした時、そいつの前に、彼女が現れたのを見た。
獅子宮すばる。
「 」
彼女は何かを言った。が、最早遠すぎて(それに瓦礫とかで起こる轟音も手伝って)聞こえない。
ただ、僕にはその口の動きが見えた。
僕だから。僕、だから。
恐らく、彼女はこう言ったのだろう。
「此処で消えなさい、〝藍崎ひより〟の絞りかす」と。
あの、授業中に聞こえる声と同じ声色で──
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