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けど、無理だ。
気が付いたら不自然に暗い世界にいて、半透明で巨大な──人型の何かが街を破壊していて、それをクラスメイトが隕石を降らせて退治していた。
──という光景を目の前で見せられて、一体誰が忘れられるのだろうか。
無理だ。
少なくとも僕には。
同級生が魔術師なんて、これっぽっちも笑えない。
「……」
まあ。そういう僕にも、これっぽっちも笑えない秘密があるのだけれど。
……そうじゃなくて。兎に角! 僕には無理だ。
「無理だ」
「なら死になさい」
「……!」
ここまで理不尽な二者択一の選択肢があるなんて初耳だ!
同級生に死を迫られる高校二年生なんて何処の世界を探しても僕くらいだろう。
「あら、答えないのね」
「驚いてただけだ」
「そう。で、──どうなの?」
「断る。てか、嫌だ」
「なら忘れなさい」
「それは無理だ!」
なんか僕が駄々こねてるみたいじゃないか。
いや、そうなのか。
……そうなのか?
この状況下に於いて僕の行動は仕方のない事ではないだろうか。
そうであってくれ。
後輩に示しがつかない。
閑話休題。
彼女は、諦めたのだろう。僕を哀れむような目で見て──
「ならいいわ。口外しないなら、許してあげる」
許すって……なんつー奴だ。
僕に非はないのに(もしかしたらあったのかもしれないけど、此処はそう考えとかないとメンタル的に厳しいと言うか何と言うか。──兎に角、僕に非はないと信じたい)。
「これから一年、よろしくね、天原くん」
そして、世界は、日常を取り戻した。
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