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「有り得ない、光景? なにそれ、全然想像できないよ。私も見たかったなあ」
「やめとけ。トラウマになるぞ」
──同級生が魔術師だなんて。
「えー、ほんとー? 天原くんの事だから、獅子宮さんの霰(あられ)もない姿を独り占めしたいだけじゃないのー?」
「なんで僕がムッツリみたいな扱いになってるんだ!?」
「どんなポーズだった?」
「無視は駄目だぞ葛西白亜!」
「……む……し……?」
「いや違う! てか何処まで抽象的なポーズなんだ!」
誰にも想像できないじゃないか! まあ想像する必要はこれっぽっちもないけれど。
ていうか、話がズレ過ぎた。
「そうだね、ちょっと悪ふざけが過ぎちゃったかな?」
「勘弁してくれ……」
「ふふふっ、天原くんの困った顔って中々可愛いね」
「……」
「冗談だよ、天原くん」
お前がそんな小悪魔めいたキャラ設定だなんて、僕はビックリしながら絶望するぞ。
……要するに、ガビーンってなればいいのか? まあいっか。どうせしないし。
葛西白亜。
彼女は、自分を平々凡々だと思い込んでいる。
勿論、そんなわけがない。
テストで全教科全科目満点を取り、模試で一位を取る生徒が、そんな四字熟語に当て嵌まる人間のはずがないだろ。
彼女は天才だ。
委員長の中の委員長。
──ってのは、どうでもいい話である。
「……まあ、それにしても、獅子宮さんねえ……」
「……」
てっきり僕は葛西が全知全能だと(過大評価なのは少しわかっている)思っていたが、そうではないようだ。
本当によくわからない、と言った感じだった。
……当たり前、か。
「私にもよくわからないや。ごめんね?」
「いや、わからないならいいんだ。わからないなら……」
此処で葛西が「そう言えば、獅子宮さんって魔術師だよねー」とか言いだすより、ずっとマシだ。
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