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獅子宮すばる。
魔法使い。彼女はあの時何も言わなかったが、僕は直感的にそう察していた。
勘違いだったら──とか半端なく恐ろしい事は考えない。
僕は知りたかった。
あの謎の世界(僕は異空間だと考えている)とは何か。彼女は誰なのか。
僕の力と──関係あるのか。
「て、いうか」
葛西は人差し指を立てる。
「獅子宮さんの事を知りたがっているのは、好奇心とかの類じゃなくて、やっぱり天原くんのソレが関わってるから?」
葛西は、知っている。
「いや、それがわからないんだ。だから──知りたい」
「ふうん……私にはよくわからないけど、その様子だと、獅子宮さんにも何かがあるんだよね?」
しまった。
「ああ」
しかも此処で素直に答えてしまう自分の純粋さが憎い。
ごめん、嘘。
葛西白亜。頼むからもう何も訊くな。
これ以上の介入を、僕は求めちゃいないのだから。
「……やっぱりそうだったんだ」
「なあ、葛西──」
彼女は、知っている。
「他の奴には言うな、でしょ? わかってるよ。結構な回数聞かされてるんだからね」
「ありがとう。助かる」
僕は思う。
葛西は全知全能なんじゃないかと。
そこはかとなく有り得ない話ではあるのだが、彼女は不可能を知らない気がするのだ。
立ち上がった。
それは僕。
「あれ? もう帰るの?」
「用事なんて一つもないからさ。早く帰らないと煩いのが……。わかるだろ?」
「うーん。なんとなく」
曖昧な返事。
「まあ、そういう事なんだよ。わかってくれ」
まるで許しを請う彼氏のようだ。
僕、何にもしてないのに。
「えー? 私と家庭の用事、どっちが大切だって言うのー?」
「そんな誤解を招きそうな台詞で棒読みで読むなっ!」
「わたしを、おいていくの……?」
「その迫真の演技もやめてくれ! ほどほどな感じで頼む!」
いきなり女優化してたぞ。
「もう、要求が難しいよう……」
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