私の旦那さま

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  私の飼い主は四十程の男性です。 私が赤ん坊の頃、今の私ほどの見かけだったこの人は、物語のような魔女ではありません。 月日が過ぎた分だけ、旦那さまには皺が深く刻み込まれ、月日が過ぎた分だけゆっくりと老いを重ねてゆきます。 この塔は旦那さまの屋敷の一部であり、屋敷にはたくさんの方が住んでいるようですが、塔には誰も近づきません。 「ラプンツェル」 外では強い風がふき、カタカタと窓を揺らしています。 「…」 「今日は着たままで良い、純白のドレスは花嫁を思わせるからね…」 優しく、舌が伝います。 優しく、指がはい回ります。 「…」 「感じ、声を出しなさい。卑しくね」 旦那さまの声に、全てに私の体は従います。  
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