私の旦那さま

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『お前の髪を垂らしておくれ』 そう言われても、私は髪を垂らしません。 私は一つの金の鍵を、壁の穴から落とします。 この十数メートルもの塔から髪を垂らしても、私の髪は風に舞うだけ… 私の髪は長いといっても木の床をサラサラ流れる程度、物語のように美しく長い髪ではないのです。 ひゅるひゅるり。 どんなに美しい輝きも、重力にはかなわず落ちてゆきます。 カツーン。高い落下音がここまで響き、それは冷たい手の中に包まれるのです。  
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