第二章 本家と分家

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「なぁ、教えてくれよ。この事件はいったい何なんだ」 俺は意を決して直接聞いてみた。 「…どんな些細な情報にも対価を…お前に教える義理はないね」 この言葉…もしかして…稲葉香!? でもこんなバレそうなことをわざわざ言うか? 俺はとりあえず余計な詮索はやめ、対価を考えた。 あ、そうだ。 「さっき病室であるものを拾ったんだ」 バッチを集めていたアコギ…こいつなら食いつくかも知れない。 「あるもの?」 「バッチだよ」 「バッチだと!?」 予想通りアコギは食い付いた。 「あぁ、だからこのバッチを渡すから教えてくれよ」 「本当にバッチを持っているか見せてみろ」 ん? 疑う気持ちはわかるが…それはバッチを受け取ってから教えれば良いだけじゃないか? だとするとここでアコギならバッチを先に渡せと言ってくるはず。 となると…奴の狙いは他にある…奪うか…あるいは何かを見たいか…。 表は誰でもわかる橘学園の校章だから…裏の模様か? 俺は数歩アコギから離れ、表の校章が見えるようにして見せつけた。 「奪われる気も…そのバッチの裏も見せるつもりも無いってわけだな?」 「あぁ」 やはり予想は当たっていたか…。 「…わかった。確かにバッチの存在は認めよう」 「じゃあ先ほどの条件を飲んでもらう」 少し強気な俺。 「ふっ、少しは使える奴みたいだな。わかった教えてやる。だからそのバッチを渡せ」 「先に教えてからだ」 あくまでも俺は強気だ。 きっとこのバッチは事件なんかよりもっと大事なもののはず。 「…はぁ…わかった。私の負けだ。聞き逃さないようによく聞けよ」 アコギは俺に背を向けて、頭を抱えた。 どうやらうまくいったらしい。 いつまでも負けっぱなしじゃいやだもんな。 .
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