第二章 本家と分家

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「ほう…コンセントから電気でも出るのか?コードも無しに…」 「……………」 言われて気づいた。 コンセントの周りにはコードはおろか、電気器具らしきものすら無い。 「全部火事で燃え尽きたとか…」 「…火事は魔法じゃ無いんだ。何も残さないはずがないだろ…そしてそもそもこの燃えようがおかしい…周りの壁は扉を含めて全部最新の断熱仕様となっている…だからこそ猛火はこの部屋だけに留まった…どういう意味かわかるか?」 アコギは淡々とした口調で尋ねてくる。 しかしわからないというより、考えたくなかった俺は首を横にふった。 「…誰かが灯油でもまいた」 「……………」 冷淡なアコギの声が俺に真実を告げる。 「…なら幸馬は…誰かに…殺された?」 俺は落胆を抑えきれないような声を漏らす。 「…お前の思い込みなんてどうでもいい。お前をここに連れてきたのはもう一度きちんと思い出して欲しかったからだ」 そう言ってアコギは窓際まで歩く。 「何を?」 「カーテンだよ」 不意にアコギの声に熱意を感じた。 それは確かに極僅かだったが、先ほどの冷淡な声に比べたら誰にでもわかる。 「カーテン?」 「お前はカーテンが閉まっていたと言った。つまりその証言はカーテンの存在を裏付けする」 「あ、あぁ」 だから何だ? カーテンがあったか何て何の関係が…って何でそのこと知ってるんだ? 俺は少弍さんにしか言って無いんだけど…あ、そうか、少弍さんとアコギは知り合い何だっけ? 「つまり…カーテンはあったでいいんだな?」 アコギは再び確認するように訊いてきた。 「俺の記憶を信じてくれるなら」 「かなり不安だがまぁいい」 「カーテンがそんなに大事なのか?」 俺は全く理解できなかった。 アコギ…彼女の頭は俺を遥かにしのぐのだろうか…。 「…なら一つ一つ考えるんだな。あったはずのカーテンはどこへ…何のために使われ…無くなったか」 アコギは静かにそう言うと窓から下を覗いた。 カーテンが…何故…。 いくら考えてもわからない…俺は馬鹿なのか…うん、きっとそうに違いない。 .
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