第二章 本家と分家

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外に出ると、アコギはあの病室の下から窓を見上げている。 「あの部屋の窓ガラスがここに落下…」 そう言ってアコギは芝生の上に散らばったガラスを見つめる。 「そうだな…それがどうかしたのか?」 俺はアコギと一緒になってガラスを見る。 「窓ガラスだけにしては破片の量が多いし…これとこれでは色や厚みが違う」 アコギは指差しながらそう説明する。 言われてみれば確かに多いし違う。 「本当だ…何でだ?」 俺はまさに何もわかっていないことを露見させるような発言をする。 「…なるほど、花瓶はここに捨ててカモフラージュしたつもりらしい」 「花瓶?」 しかしアコギは俺の疑問にチラッと顔を向けただけで、再び破片に目を落とす。 「ここを見てみろ」 アコギが指差す所を見た。 他の破片に比べて細かく砕けている。 「恐らく誰かが踏んだのだろう…強さ的にある程度の高さから飛んだんだろう」 「飛んだ…まさか幸馬が病室から…」 「当たらずも遠からず…お前は三階から飛び降りたと言いたいんだな?だとすると幸馬は死なずにここで骨折程度で発見されてただろうな…しかし、この事件はそこまで単純じゃない」 アコギはまるで答えを知っているかのように淡々と喋る。 「…どういうことだよ」 「お前は少し考えたらどうだ?ここに桂木幸馬がいなかった…つまり移動したか連れ去られたか…でっち上げをするくらいだから共犯がいてもおかしくないが…目撃されるリスクが上がるよりは桂木幸馬一人でやった方がいい」 何を言っているかよくわからない。 共犯って…幸馬も何か一枚噛んでるのか? でも一つわかったことがある。 「…幸馬は…生きてるのか?」 「私は始めから死んだなんて言ってない」 その言葉が全てを物語っていた。 幸馬は生きている。 事件に関わっているかもしれないが生きてるんだ。 「はは、なんだよ…心配させやがって…」 俺は涙目になりながら笑った。 一時は本当に死んだと思っていた。 「…死んでいた方が幸せだったかもな」 そんなアコギの呟きは、今の俺の耳には届かなかった。 .
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