カルマの坂:物語

3/7
前へ
/11ページ
次へ
「お帰り。」 『影』が言う。 「ただいま。」 『闇』がこう言った。 「お帰り。んで、『風』。今日の収穫は?」 そう言われて、持っていた袋を裏返す。 地に落ちたのは、食物、水など。普通なら考えられないほどの量が袋から落ちる。 「誰にも見つからなかったか?」 『闇』は簡単そうに言うが、無理な話である。 『風』と呼ばれた少年は、 「そんな訳は無いさ。盗って見つからない訳が無い。」 今となっては定番の返し文句を吐く。 『闇』は、 「だろうな。しかし、逃げ切れたのだろう?」 『風』は、当たり前だ、と思った。 でなければ、自分が此所に居る筈が無い。 肯定の意を込めて、頷く。 『闇』は言う。 「さすが『風』。名は体を表すとは善く言ったものだ。」 これも、常套句であった。 『影』が続く。 「やっぱりすげぇな、『風』は。俺だったら一発でオサラバだぜ。」 そう、此所では、各自仕事が決まっているのだ。 『風』は窃盗、『影』は人殺し、そして『闇』は司令官と。 此所で『闇』は我慢出来なくなったらしい。 「しょうがない、食うか。」 と言って、一番に食べ始める『闇』。それに続き、『影』、『風』の順で食物に手を伸ばす。 いつしか、食事中は無口が暗黙の了解と成っていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加