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「お帰り。」
『影』が言う。
「ただいま。」
『闇』がこう言った。
「お帰り。んで、『風』。今日の収穫は?」
そう言われて、持っていた袋を裏返す。
地に落ちたのは、食物、水など。普通なら考えられないほどの量が袋から落ちる。
「誰にも見つからなかったか?」
『闇』は簡単そうに言うが、無理な話である。
『風』と呼ばれた少年は、
「そんな訳は無いさ。盗って見つからない訳が無い。」
今となっては定番の返し文句を吐く。
『闇』は、
「だろうな。しかし、逃げ切れたのだろう?」
『風』は、当たり前だ、と思った。
でなければ、自分が此所に居る筈が無い。
肯定の意を込めて、頷く。
『闇』は言う。
「さすが『風』。名は体を表すとは善く言ったものだ。」
これも、常套句であった。
『影』が続く。
「やっぱりすげぇな、『風』は。俺だったら一発でオサラバだぜ。」
そう、此所では、各自仕事が決まっているのだ。
『風』は窃盗、『影』は人殺し、そして『闇』は司令官と。
此所で『闇』は我慢出来なくなったらしい。
「しょうがない、食うか。」
と言って、一番に食べ始める『闇』。それに続き、『影』、『風』の順で食物に手を伸ばす。
いつしか、食事中は無口が暗黙の了解と成っていた。
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