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心なしか震えていた手を、やんわりと掴まれた。
「僕、流鬼の……何?」
向けられた眼差しは、柔らかい。
「京さんは…俺の…大切な人です」
何度だって“愛している”と…貴方の為なら。
「そういうんを、恋人って呼ぶのやろ?」
違うん?
「何で、全部、一人で抱え込むん」
バレていた…?
「―――もうちょい甘えたって…バチ、当たらんで?」
グツグツと煮え立つ鍋の中には、相変わらず入れるタイミングを間違えて変色し始めた、ほうれん草。
――――止めなきゃ。
早く、火を止めなきゃいけない。
なのに…身体が動いてくれない。
京さん。
貴方は…貴方という人は…。
何処までも、俺を夢中にさせる―――…。
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