恋時雨

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 知らないうちに目で追ってしまう。あの方を知り得て私は幾日無駄にしたろうか。  飛脚を求めて使いに出た際、私は彼女を見つけた。彼女は私と同じく文をだしに来たらしい。裏地の白が、走る度に紺の着物に映える。  息を切らして彼女は、これを江戸まで届けて欲しいと涙ながらに伝えた。文をそんなに届けてもらいたいのか。それとも不幸が有ったのか。 「大丈夫ですか」  私は思わず話しかけてしまった。年頃の彼女にいきなり話しかけてしまったのは、今思えば不躾であったが、頭の中は全て、彼女で埋め尽くされてしまった。 「無様な様をお見せしてしまいました。私は大丈夫で御座います」 健気に帰ってくる言葉の、なんと儚げなことか。 気丈に振る舞うが、目に涙をためる彼女を、平気なら良かった、などと返事を返すわけにもいかなかった。
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