慟哭

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「「ブォオオオオオオオ!!」」 意気揚々と飛び出してきた自分よりも弱く小さい人間どもを潰し、魔獣ミノタウロスは満足そうに吠える。 「畜生!!」 「応戦しろ!! あの不細工をぶっ殺せ!!」 目の前で仲間が潰されていくのを見て、兵士が叫び、周りにいた者たちが弓と魔法を放つ。 キン! キン! しかしその攻撃はミノタウロスが纏う赤黒の鎧に防がれ、傷の一つもつけること敵わず バコン!! 反撃した兵士たちは意図も簡単に潰され、薙ぎ払われた。 ザキの一撃とノアの策略により勝ち取った最前線は徐々に押し戻され、このままでは奪い返される。 前線で戦う兵士たちの中で焦りが生まれ始め、その様子をみた魔族たちはミノタウロスの横をすり抜け動きの鈍った一部の兵士たちを殺していく 「人間どもは怖気づいている!! 一気に進め!!」 その号令に勢いに乗りつつある魔族たちが呼応して突撃をする。 ザン!! バシュ!! だが、この魔族は勘違いをしていた。 【最前線】 それは一つの戦いの中で最も苛烈を極める戦場、不測の事態など当たり前、常識などは通じない。 必要なのは 「ヒャッフー!!」 「うらぁああ!!」 不測の事態にも動じない胆力と 「落ち着け!!」 「私が道を開く!! 後に続け!!」 臨機応変に状況を見極める対応力 動きが鈍っていたのは先鋒隊のほんの一部、主力を務める五番隊、西方魔獣には問題はなく。 五番隊隊員は魔力を用いて身体強化し、自分よりも巨大なミノタウロスに飛び掛かかって自分の攻撃が通るまで何度でも剣を突き刺す。 西方魔獣はケンタウロスが鎧の防げていない箇所を二振りの長剣を用いてい切り裂く。 「ブガ……アゴ……」 その攻撃に無双の強さを誇っていた魔獣も次々と倒せれていくが 「ブォオオオオオ!!」 ミノタウロスも巨大な斧を振るい、隊員の頭を砕き、ケンタウロスを吹き飛ばす。 まさに力と技のぶつかり合い。 グチャ!! バシュ!! 最前線は肉のつぶれる音と裂ける音が絶え間なく響き続ける。 「くそ! 埒があかない……」 魔族側の部隊長がこの状況を見て苛立ちながら振り返り 「お前たちの出番だ!! 奴らを潰せ!!」 黒鉄の武具を身に纏った魔人部隊に指示を送った。
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