慟哭

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「貴様らは痛みも恐怖も感じない最強の部隊だ!! とっととあの糞どもを殺してこい!!」 部隊長はそう叫びながら最前線を指差す。 ザッ…ザッ… 指示を受けた黒鉄の魔人部隊は歩を進める。 全身を鋭利な棘に覆われている鎧は通常の倍以上の厚さと重量があり、大剣を持ち進む姿は一つの巨大な獣のようであった。 「グゥウウウウ…」 「オオォ……」 頭を全て覆う兜から覗く赤い瞳は最前線で戦う敵だけを見据えている。 (フフフ……詳しくは知らんぬが、六大魔の研究により生まれた副産物の薬を使って強化した魔人部隊……この力をうまく使えば私もいずれ……) 与えられた最強の戦力を思うがままに使えることに満足しながら、部隊長は重戦士達が自分の横を通り過ぎていくのを待つ。 「……うん?」 何故だ? 自分は確かに指示を出した。 にもかかわらず、来ないのだ……一向に自分のもとに部隊が来ない。 すぐ後ろに控えていたのだから十秒も時間は要さない。 「どうした!! 早くしろ!!」   苛立ちながら部隊長は振り返る。 部隊は直ぐ側まで来ているにも関わらずその場で立ち止まっていた。 「おい!!」 数十体からなる部隊にも関わらず応答はない。 (まさか薬によって何か異常が? こんなときに……) 「貴様!! いい加減に……」 我慢できず一番前に立つ魔人に近づき、手を伸ばそうとした瞬間 ゴトッ…… 黒鉄の鎧を身に纏ったまま魔人の頭が地に落ち…… ゴトッ…グチャアア…… それを皮切りに全ての重戦士がただの肉塊に変わってしまった。 「なっ、何が……」 予想だにしなかった出来事に状況を整理できないまま ブシャ? 部隊長の首も跳んだ。 ドサッ そして力無く倒れた魔人の後ろからは バチ…バチ… 雷の魔力をその身に纏い、魔人の赤黒い血を滴らせた武具を装着した仮面の男が立っていた。 「あっ……ああ……」 「こいつは、まさか……」 その姿を見た魔軍の兵士達は、震え上がった。 今の自分達には到底敵うことができない圧倒的な力の差を感じてしまったために …… 「上級悪魔を呼べ!【雷炎の鬼人】だぁ!!」  声を震わせながら一体の悪魔が叫んだ。
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