慟哭

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その兵士は他の伝達員を押し退けてノアの前に出る。 「どうしましたか?」 ノアは敢えて尋ねた。 出来ることなら誤報であって欲しかったが… (やはり、二つの部隊は本当に壊滅していたようですね……) 報告を受ける前にノアは全てを察していた。 その兵士の表情が全てを物語っていたからだ。 (まさかガルトさんと…サヤさんが……) 未だに信じられなかったが、今は仲間の死を悲しんでいる場合ではない。 (ならばこの場は一時アイフに任せて、私自らが対応に動く必要がありますね……) 『アイフ、聞こえますか?』 彼らへの弔いはこの戦争が終結した後に行おう。 そう思いながらノアは同時にアイフに念話で話しかけた。 「きっ…緊急事態です!! 【蒼炎の覇者】様!!」 しかし、その兵士からの報告は… 「東方リスティア、西方ハウゼン各本部及び、【灼熱の豪拳】様、【霧雨の暗殺者】様、両隊長とも念話での通信が断絶!! 通信不能状態です!!」 想定した報告を更に上回る最悪のものであった。 「なんですって!? そんな馬鹿なことが!!」 両国ともに先程まで、自軍優勢の報告が入っていたのだ。 『うおっ!? おいノア!! どうしたんだ!!』 あまりのことにノアの声は念話を通じてアイフにまで届いていた。 「事実です!! 現在、通信部隊を総動員して通信回路の復旧にあたっておりますが…どの回線からも応答がありません!!」 報告を受け、ノア自身も通信能力を全開にしてコンタクトを試みるが結果は同じであった。 『おいノア!! 聞こえるか!?』 この時、アイフは最前線で助けた兵士からピョーラの位置を聞き、合流をしようとしていた矢先であった。 (ノアのあんな焦ってる声、初めて聞いたぜ…一体何があったんだ) ノアから突然の念話に、アイフの足が止まる。 (くそ、どうしたらいいんだよ? 一旦本陣に戻るか? けど……) そして自分の下すべき判断に悩みながらアイフが本陣の方を振り返った時…… 「いくぞ!! 我らの勝利のために敵を粉砕するのだぁ!!」 「「「「ウォオオオオオオオ!!!!」」」」 ドガァアン!! 遂に【エデン】本隊が魔軍と激突したのだ。 ……そして時を同じくしてある別次元の世界にて 「さぁ、やろうか……」 「準備は万全!」 「待ちくたびれたぜ」 三体の魔界の王がその腰を上げた。
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