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これがクロスの持つ魔武器-紅弓である。
魔武器とは魔晶石と呼ばれる物質に魔力を込め、特定の形に変化させたもの。それは個々によって形状が異なり、普段は手の平に収まる程度の大きさの晶石に戻る--
雷矢を引き絞ったクロスは迷わず一撃を放った。
黄色の閃光が走り、獲物の目の前の地面に深く突き刺さる。
獲物が光の筋を追ってこちらに振り向いた。
額に浮かぶ六角形のクリスタル、鱗のごとき皺で細まった目と高く突き出した楕円の鼻。開かれた顎からは長い牙が覗き、全身の毛を逆立てて威嚇してくる。
(よし、そのままこっちに来い)
見つかったことを確認して一歩、二歩と後退すると獲物-クリスタルボアが接近してきた。
掛かった。
クロスは踵を返し、ガサガサと激しい音を立てながら猛スピードで突進してくるクリスタルボアを背に一目散に山を駆け降りる。
目の前のナイフで印を付けた木を避けて先にある別の目印を目指す。道筋を辿っていくと前方にわずか開けた場所が見えた。
すぐ後ろにいるクリスタルボアの気配が強くなる。
ピギィィィィ!!
けたたましい叫び声を上げながらクロスの背に飛び付くクリスタルボア。
「ふっ!」
クロスはジャンプと同時に木の枝に弓を引っ掛け、勢いそのままに逆上がりの要領で枝に乗り上げた。
獲物が急に消え、クリスタルボアはそのまま広場へと飛び出していく。
そして。
プギィィィィィィ!!
数瞬の後、クリスタルボアの断末魔の叫びが響き渡った。
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