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此処から帰りたいって本当にそう思っているか…?
そんなの、当たり前じゃない。帰りたいって思ってるに決まってるわ!
「…そんなの、帰りたいって思って…思って……」
…何で?帰りたいって思ってるのに…思ってるはずなのに…言葉に出そうとすると…言葉が詰まって、出てこない…。
私が呆然としていると、暫く黙って見ていたハクトが私を見ながら、あやすように私の頭を撫でながら、あやすような口調で話し出した。
「…アリス、君は帰るためにはこの国を知らなくちゃ…思い出さなくちゃいけない。アリス、この国を回っておいで。きっと思い出せるから。…大丈夫。この国の皆はアリスの味方だよ」
ハクトは目を細め優しく微笑みながらそう言った後に指をパチンと鳴らした。そしたら…目の前に扉が3つ出てきた。
どれも代わり映えのしない、白い扉。唯一、ドアノブの色だけが違う。赤いドアノブ、緑のドアノブ、青いドアノブがある。
私がポカンと突然現れた3つの扉を見ている中…ハクトは話を続ける。
「…アリス、さぁ…扉を1つ選んで。そして扉を開けるんだ。私とおいかけっこをしよう。ルールは簡単だよ。私を追いかけて、この国を回りきれば君の勝ちだ。但し…気を付けて?ちゃんと“私”を追いかけないといけないよ?間違えてしまうと…この国を回りきれないかも知れない。
アリス、さぁ…アリスは白兎を追いかけるもの…。私を追いかけて…?でも、これだけは忘れてはいけないよ?“私”をキチンと追いかけること…。あと、この国の皆は君の味方だってこと。だから国の皆の助言はちゃんとお聞き」
「さぁ、アリス…扉を開いて?そしたらゲームの…物語の始まりだよ」
そう言い残し、ハクトは消えた。
いや…あの、正確に言うと普通に部屋から出ていったんだけどね。
何故か、去り際にハクトのズボンに垂れている金色のチェーンがキラリと光ったのが印象的だった…。
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