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部屋から数分歩いて、駐車場に着いた…
車の扉を開けると熱気が頬に触れた…
「暑いな…夏だから海に行くか…」
意味不明な独り言に自分でも呆れてしまう…
すごく身体が軽く感じる…死ぬ気になればなんでも出来るって意味がわかった気が…
しないね…全く…
上の空のままいつの間にか車は町を抜けて、長い田園風景を抜けて海が見える道へ…
部屋を出てからの自分の行動が断片的にしか思い出せない…
命の期限を知らされて、色んな想いが頭の中を駆け巡っていたせいだろう…
「いつ見てもここからの海の眺めは綺麗だな…
でも…君のほうが綺麗だ………君って誰だよ!」
一人ぼっちが長いせいかこんなくだらない独り言ばかり多くなっていた…
そうでもしなければ自分の存在すら確かめられずにいた…
「あと少しで楽になれそうだな…
もし…あの世があるなら美砂に会えるといいけど…
それが叶わなくても、生まれ変われるなら、今度こそ三人で幸せに暮らせるといいな…」
痛みをまた思い出して身体が重くなりはじめた頃…
車は海に着いた…
正直言えば車の運転中は考え事ばかりしていたから、どういう道順で来たかなんて全く記憶に無い…
人を轢かないでよかった…
と不安が一瞬脳裏を過ったがすぐに消えていた…
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