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空は憂鬱な東雲(しののめ)を掻き消し、黒く染まる。
あぁ、やっと太陽が沈んだ。昼が嫌いと言うわけではない。もう、昔のヴァンパイアとは違って、太陽は克服している。ただ、太陽の眩しさを身に浴びれば、自分の罪が彩られている気がするのだ。
永刧の命を持ち、
人の生き血を吸い、
太陽や十字架やにんにくに弱く、
残虐な振る舞いをする
そう恐れられ生きてきた俺は、すでに、ヴァンパイアとして、生きることに絶望している。
来年でこの世界に生まれて百年になる。
時々、空に聞きたくなる。ヴァンパイアと人は、どちらの方が罪深いのか。
「とるに足らないことだな」
俺は、そう呟いて、寝転んでいた河原から、立ち上がった。あぁ、夜の匂いがする。
ヴァンパイアと言っても、俺は、随分と人に近いようだ。発達した犬歯もほぼ無い。太陽も克服した。十字架は、苦手どころか、キリストを信仰している。体も完全に人間で、性欲もある。
ただ、血を吸うかどうかは、もはや生存には関わらないが、血を吸うことで、相手の感情がわかる。
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