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俺たちはバカでかい敷地の中を歩き続け、ようやく寮の入り口にたどり着いた。
やっぱり豪華絢爛な建物だった。さすが特待生専用の寮だな…
「瑞樹さんのお部屋は54号室です。エレベーターで三階まで行けばすぐにわかりますわよ」
そういうと、橘は部屋の鍵を渡してきた。どうやらここでお別れらしい。
「ありがとうございます。何から何まで…」
一応、俺はぺこっと頭を下げた。何だかんだいって橘にはホントに世話になったもんな。
「いえいえ、瑞樹さんのためならお安い御用です。それでは、わたくしは入学式の準備で忙しいので、これで失礼します」
…さて、ここからは一人だ。もう助けてくれる人はいない。この学校の女どもに俺が男だということ…絶対にばれちゃいけないんだ。
父さん、母さん、成功を祈っていてくれ。俺、絶対ここを卒業してみせるよ。
そして目をつむって、二人の顔を思い浮かべる。
…不快になったのですぐに振り払った。
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